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どうも!イギリスが好きで、イギリスの映画やドラマを日々探っているサニー柴本です。
今回Amazonプライムで探し当てたのは2019年に制作されたBBCの『Pure』。
24歳の普通の主人公、マーニーはOCD(強迫性障害)、それも性的な妄想に頭の中が侵食されるという疾患を持っていて、なんとか克服しようとスコットランドの田舎から大都会のロンドンに引っ越し、新天地で新たな出会いを得ながら病と向き合っていくという物語。
今回は、そのOCDとは何かというところから始まり物語を探っていきたいと思います。
OCDとは?
ドラマの題材となっているこのOCDという病はObsessive Compulsive Disorderの略で、上記のように日本語では強迫性障害。
自分の意に反して不合理な考えやイメージが頭に繰り返し浮かんできて、頭の中や行動が支配されてしまうという疾患です。
医学的には50人〜100人に1人がOCDになる可能性があると考えられていて、決して少ない数字ではありません。
一般的にも知られているのが手の汚れを気にして何度も手を洗ったりなど汚染に対して過敏になることや、家を出る時にドアに鍵をかけたか、ストーブの火を消し忘れていないかなどに不安になり家に帰ってしまうという症状。
これだけ聞くと、あれ、自分もそういうきらいがあるな…という気持ちになりますが、その度合いや振り幅は大きな問題です。
性的な妄想が頭から離れないOCD
マーニーの症状は、その中でも特殊な「セックスにまつわる」OCD。両親の結婚10周年を祝うパーティーで、祝辞を送ろうとしてステージに立つが、頭の中で来賓たちの乱行が始まるという妄想に支配され、言葉を失ってしまいます。
その妄想の再現は思ったより淫らで、ただのセックスシーンではなく男女が入り乱れ、自らも含めた複数で行われる濃厚で過激な絡み。
10年以上この症状に悩まされていましたが、家族を含めた妄想は初めてで、マーニーは絶望と危機を覚えます。
これはいよいよだと、すぐに夜行バスでロンドンへひとっとび。ロンドンに住む友人のシーリーンを頼って居候を頼み込み、環境を変えて大都会で生活を始め、藁にもすがる思いで症状を治そうと試行錯誤していきます。
通院はもちろん、浴びるように酒を飲んで女性と性行為をしてみようとするなど手段は厭いませんが、全く症状はよくなる気配はありません。
ただ、そうやって試行錯誤をするうちに新たな出会いがつながっていきます。
セックス依存症の自助会に参加したことで、ポルノ依存症のチャーリーに出会い、その彼がマーニーが悩まされていた原因がなんたるかを医学書から独自で調べ当てました。
ここで初めて自分の病名がOCDであることを認識し、世界が変わったような気分になり、自分の妄想は病気のせいなんだと思えるようになります。
医師もとんちんかんなを処方をする中、教えてくれたのはついこの前会った人。心の病の診断は「これ」と専門医でも診断するのは難しいのかもしれません。
チャーリーという得難き理解者を見つけられたのは、マーニーが自助会に自ら参加し、縁を大切にしたから。レズビアンとしてセックスはできなかったけど、そのお相手アンバーにウェブマガジンのインターンとして雇ってくれと頼み、仕事もゲットする。
自分を解明したいという真っ直ぐな心によるマーニーの高い行動能力と、親しみやすくて魅力的な人柄は周囲を惹きつけ、新天地ロンドンでもなんだかんだ周りは良き味方ばかりとなりました。
逆にスコットランドの旧友のヘレンの方が、スコットランドからロンドンにマーニーを心配しやってきてくれたものの、意を決してOCDを打ち明けたにもかかわらずその秘密をロンドンの友人たちの前で暴露して足を引っ張ります。
それも大親友だったマーニーに取り残されたことを不服に思ってのことですが、OCDにより周囲との関係はなかなか一筋縄ではいきません。
マーニーのひたむきさとずうずうしさ
このドラマには続編がなく、6話のみとコンパクトなのですが、ラストはさまざまな出来事を経たマーニーがどうやって今後、OCDと付き合い生きていくかというクライマックスに向かいます。
ヘレンに自らの疾患をロンドンの友人たちに明かされた以降も、それぞれの関係は途絶えることなく、友人たちはマーニーの病状を受け入れようとします。それでも必死にODCの完治に向けて突き進もうとし、混乱するマーニー。
同居人のシーリーンと口論になり、「OCDではなくあなたの態度に対して怒っている」と指摘され、いい恋仲になりそうなジョーには「病気に向き合ってから関係を持とう」、チャーリーには「病気を治すのではなく、病気と共生していかなければ」と諭される。
そういった経緯を経て、マーニーは「自分を見つけるには心を開かなきゃ。私ってバカ者ね」と混乱していた気持ちを立て直します。
他人の、しかも性的で過激な妄想をここまで映像で暴いて、コメディータッチな描写を交えてOCDという病気を私たちに教えてくれるこのドラマ。
誰にも言えないけれど、誰でも人には言えないひどい妄想を頭の中で抱くことは少なからずある。
そんな後ろめたい題材を大胆に描いてくれ、自らの疾患に立ち向かおうと真っ直ぐに生きるマーニーにどこか救われるような気持ちになります。
自分が自分である以上、立ち向かわなければならない疾患を持つ可能性は誰にでもあります。
そんな時、マーニーのようなひたむきと、時にはずうずうしさを持って自分をさらけだせば、周囲の優しき人たちが意外と温かく理解してくれるかもしれないということを伝えてくれているのです。