落語はストレス社会の最強サプリ?初心者が歴史からおすすめ寄席スポットまで全力解剖

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サニー柴本
サニー柴本

あ〜給料は安いし、婚活はうまくかないし…
同期とどうして差がついたんだろう

資本主義経済化した戦後、私たちは豊かな暮らしの代わりに、常に他人と比較し、上を目指し続けなければならない終わりのないマラソンが始まりました。

現代は経済の停滞やSNSの普及により、息苦しさが増しています。楽しそうな誰かの投稿を見て、つい自分と比べてしまう。大衆の意に沿わなければ、正論を盾に攻撃される。

筆者も例に漏れずその生きづらさに苦しんでいたところ、ふと幼い頃に父の車の中で聴いていた落語が頭に流れてきました。

これだ…これかもしれない。

落語は現代の私たちに何をもたらしてくれるのか
基礎知識を学びながら、全力解剖します!

まずは無料体験!
  • 発祥…1623年 江戸時代初期/徳川家光が第三代将軍に任命された年
  • 原書…『醒睡笑』(せいすいしょう)/笑い話を集めた作品集
    •   作者:安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)/落語の祖
  • 最初の落語家…曽呂利新左衛門/豊臣秀吉の家臣

安楽庵策伝は浄土宗の僧侶で、説法を説く説教僧でした。説法とは、仏教の教えを僧侶が現代の言葉や身近な例えを用いてわかりやすく伝え、生きるヒントを与えるお話。

この『醒睡笑』も最後にオチがついていて、落語の原典となっています

最初の落語家は豊臣秀吉に仕えた曽呂利新左衛門といわれています。機知に富んだ秀吉を気の利いた返しで喜ばせる御伽衆でした。

落語は大衆文化として、元禄期(1688-1704)には大阪を中心に、文化・文政期(1804-1830)になると江戸を中心に発展していきます。

なぜ江戸時代に栄えたのか?

その背景には、火事や飢饉など江戸時代が直面していた過酷な生活環境がありました

江戸時代は木造建築が多く、火事が頻繁に発生していました。特に有名なのが明暦の大火(1957年)で、江戸の大半が焼け、3万〜10万人が亡くなったといわれています。

さらに、天明の飢饉(1782-1788年)のような大規模な飢饉も起こり、人々は常に死と隣り合わせストレスフルな時代だったともいえます。「宵越しの銭は持たない」(その日に得た収入は、当日中に使い果たす)という言葉があるように、刹那的な気性を持っていました。

そんな過酷な環境の中で、少しでも楽しく笑って暮らすために落語という笑いの文化が発展していきました。

江戸時代に完成した落語の演目は、噺家たちの巧みな話芸によって、現代にまで脈々と受け継がれていきます

稀代の天才、七代目の立川談志は「落語とは人間の業の肯定である。だから正しい人間は落語にならない」という有名な言葉を残しています。

これは、人間はしょせんどうしようもないものだ、という意味です。

落語には、見栄を張って失敗する人、働かずに酒ばかり飲んでいる人、勘違いで大騒ぎする人など、どうしようもない人が次々と現れます。

噺家の話術に引き込まれ、彼らの失敗談に笑い転げていると、「自分もこのままでいいのかも」と、肩の力が抜けていきます。

落語は、疲れた現代人こそに必要な心のサプリメントとなるのではないでしょうか。

落語家は弟子入りした師匠の屋号を受け継ぎ、下の名前は師匠が名付ける
柳家…江戸落語の伝統を受け継ぐ。柳家小などの名人を輩出
三遊亭…古典落語の名人が多い。三遊亭圓生などが有名
古今亭…江戸落語の代表的な系統。古今亭志ん生などの名人が多数
立川流…七代目立川談志が1983年に創設。立川志の輔など多くの人気落語家を輩出

本記事は、以下の著書を参考に作成いたしました。

落語の演目の数は300ほどにものぼるといわれています。総称して「古典落語」と呼ばれ、現代の落語家はいつでも誰でも演じることができます。

その色褪せない演目の数々を、ストレス社会への効能とともにご紹介します。

時そば

勘定の途中で「今、何時だい?」と時刻を聞き、店主が答えた数字を利用して一文くすねる男の物語
その現場を目撃していた別の男が、翌晩に「自分も得をしよう」と下手な演技で挑戦。
しかし時間を聞くタイミングを間違え、逆に一文多く払ってしまうという自爆展開へ。

前座から真打まで一生磨き続ける、定番中の定番の落語です。

要領よくやろうとしすぎて自爆する人が滑稽で、ずる賢く生きて疲れるより、正直に生きて損するほうがまだ笑える、と学べます。

落語家には3つの階級がある
前座…寄席の会場の直後に上がり、場を温める係で下積みの3〜5年間
二ツ目…紋付きの着物を着、羽織を脱ぐことができる。師匠の家での雑用がなくなるが、半人前
真打…寄席でトリを務め、弟子を取ることのできる最高位・師匠

・落語家は高座に上がると、まずとよばれる世間話や導入の小噺をし、その後本編に
・羽織を脱ぐと、物語に入るという意味が込められる

芝浜

大金を拾った魚屋の勝五郎が、女房から「あれは夢だった」と告げられ、絶望から立ち直る感動の名作。
酒を断ち、三年間の猛修行を経て再起を果たした勝五郎に、大晦日の晩、女房はある真実を明かします。

年末の風物詩として、落語家の格が問われるといわれる人情噺です。

やり直しはいつでもできる、という救いがあり、お金よりも大切なものに気づき進む勝五郎の姿は、上昇志向に疲れた心に本当の豊かさを気づかせてくれます。

目黒のさんま

遠乗り先でお腹を空かせたお殿様が、庶民の焼く脂の乗ったサンマを初めて食べて感動する物語。
あの味が忘れられないお殿様は屋敷でも所望しますが、家来たちが用意したのは、上品すぎて味の抜けたサンマ
サンマは目黒に限る」という有名な一言に至るまでの、お殿様の世間知らずな執着心が笑いを誘います。

誰が聴いても楽しめる、落語のとぼけた味わいを代表する滑稽話。

ブランドや他人の評価がすべてではなく、自分の直感こそが幸せの基準だと信じる勇気をくれます。

牛ほめ

父から教わった新築の家を褒めて小遣いをもらう術を、与太郎が実践しに行くお話。
教わったフレーズを必死に暗記しますが、いざ本番となると言葉が混ざり、おじさんを困惑させます
必死に褒めようとすればするほど、事態は思わぬ方向へ転がっていき、最後にはとんでもない言い間違いを

キャラクターの演じ分けなど落語の基礎が凝縮された、落語家が真っ先に教わる演目。

マニュアル通りにやることが正解ではない。完璧を求めて空回りする自分を、与太郎と一緒に笑い飛ばすことができます。

なんと、歴代の落語家たちによる数々の名演は、YouTubeで視聴することができます

現代落語のルーツを作った落語家たちの名演を厳選しました。

六代目 三遊亭圓生 『死神』

六代目 三遊亭圓生 1900年 – 1979年
子供の頃から寄席に出ていた神童で、徹底した稽古の虫。生涯で300以上のネタを完璧に仕上げた。
緻密で品格があり、滑稽話から怖い噺、人情噺まで最高水準の技術を誇る。

死神
借金まみれの男が死神から呪文で病人を治す力を授かり、医者として大儲け。
欲に目がくらみ、死神を騙して持明がつきそうな病人を助けてしまいます。
怒った死神に、消えかかった自分の命のロウソクを突きつけられ…
グリム童話をヒントにした落語界屈指の幻想的な名作。

五代目 古今亭志ん生 『火焔太鼓』

五代目 古今亭志ん生 1890年 – 1973年
フラ(天性の可笑しみ)の塊で、戦後に爆発的な人気を得た落語の神様
座っているだけで面白いといわれ、酒を飲んで高座で寝てしまっても客が喜ぶという伝説が。

圓生と志ん生は同時期のトップ2。お互いに認め合いつつも、芸のスタイルでは真っ向から対立

自由奔放でフラの志ん生に対し、緻密で型の圓生はお互いにないものを持っていました

火焔太鼓
商売下手な古道具屋の主人が、ボロい太鼓を仕入れて、女房に「そんなゴミを」となじられます。
偶然通りかかったお殿様がその音を気に入り、小判三百両という、数千万円もの大金で買い取られることに
最後にお殿様へ放つ一言が最高のサゲとなる、明るい一席。

三代目 古今亭志ん朝 『文七元結』

三代目 古今亭志ん朝 1938年 – 2001年
志ん生の次男。若くして天才の片鱗を見せた、落語界初の36人抜き真打昇進を果たしたスーパースター。
華やかでスピード感のある芸で、現代落語の標準を作ったといわれている

志ん生という偉大な父の影に隠れることなく、独自の華やかさで若くしてスターになりました

志ん生はその才能を信じ、英才教育を施したといわれています。

文七元結
博打好きの左官・長兵衛が、娘を身売りし手にした五十両を、身投げしようとする若者・文七に投げ与えてしまいます。
無一文になった長兵衛ですが、その後、文七の主人の計らいで思わぬ幸運が舞い込み…。
『芝浜』と並び称される、江戸の粋が詰まった大作。

立川談志 『芝浜』

立川談志 1936年 – 2011年
自らを天才と自称し、10代から頭角を表す。27歳という異例の若さで真打に昇進。
分析家・勉強家で、落語を「落語とは人間の業の肯定である」と哲学した孤高の反逆児

1983年には落語協会を脱退し、独自の「落語立川流」を創設。古きにとらわれず自らの足で道を切り拓きます。

東京の落語会は4団体に分けられる
落語協会王道・伝統で最も層が厚い
落語芸術協会大衆性があり、『笑点』のメンバーも多数
落語立川流…談志が創設し、技術に厳しい
円楽一門会…五代目円楽が創設し、団結力が強い

談志と現代のお笑いとの関わり
『笑点』の初代司会者を務めるなどお茶の間のスターに
2022年には『M-1グランプリ』で審査員を務め、当時は邪道といわれた笑い飯に最高得点をつける。
既成概念にとらわれず評価する姿勢を示した

志ん朝とは同世代。気位の高い談志が「あいつの華には勝てない」と本気で嫉妬していた好敵手でした。

志ん朝は63歳の若さで生涯を終え、談志は「あいつがいなきゃ、俺はもっとのんびりでたのに」と最大のライバルを失った孤独を嘆いています

1人の男が更生していく心理を緻密に演じた談志の『芝浜』は、落語界の伝説です。

晩年は寄席ではなくホールで独演会を行い、毎年の大晦日に『芝浜』を披露。

ファンにとって欠かせない恒例行事となり、長年愛され続けました。※芝浜は物語のクライマックスが大晦日の晩

声を出して笑う観客の声を聞いていると、実際に足を運びたくなってきます

都内から行ける寄席は思ったより豊富で、厳しいしきたりもありません

寄席…落語、講談、漫才、漫談、手品などが行われる常設の劇場を指す
年中無休で、昼の部は正午前から、夜の部は午後5時前後から。当日券のあるところがほとんど
普段着OKのため、ふらっと入ることが可能

出演者や内容は上席(毎月1日〜20日)、中席(毎月11日〜20日)、下席(毎月21日〜30日)ごとに変更
知っている落語家の出演を狙うのがグッド!
※詳細は各寄席にてご確認ください

定番!東京の四代定席
新宿末廣亭(新宿三丁目)
出典:公式サイト https://suehirotei.com/

都内で唯一の木造建築。畳の桟敷席があり、最も江戸の寄席の情緒を味わます。

開演:昼の部 12:00~16:15/夜の部 16:45~20:30
料金:8時頃~¥3,000-/仲入り頃~ ¥2,000-

浅草演芸ホール(浅草)
出典:公式サイト https://www.asakusaengei.com/

観光客も多く、最も明るく賑やか。漫才やマジックも多く、初心者でも楽しめます。

興行:昼の部 11:40~16:30/夜の部 16:40~21:00
料金:通常 ¥3,500/夜割 18時〜¥2,500 19時〜¥2,000

鈴本演芸場(上野)
出典:公式サイト http://www.rakugo.or.jp/

椅子席にテーブルがあり、お弁当を食べながらゆったり鑑賞できます。

開演:昼の部 12:30/16:00 夜の部 17:00〜20:15
料金:一般 ¥3,500/中入り ¥2,000

池袋演芸場(池袋)
出典:公式サイト https://www.ike-en.com/index2.html

地下にある舞台は客席が近く、臨場感たっぷりです。

開演・料金:1〜20日 昼の部 12:30〜/夜の部 17:00〜… 昼の部 一般 ¥3,000
21〜30日 昼の部 14:00〜/夜の部 18:00〜… 昼の部 一般 ¥2,800

新!落語スポット
渋谷らくご(渋谷)
出典:公式サイト http://eurolive.jp/

映画館内ホール・ユーロスペースで若者向け。初心者への解説が充実しています。

興行:第二金曜日〜第三火曜日の5日間 10公演/平日18〜19:00時の1時間、20〜22:00の2時間
料金:一般¥2,500前後
公式サイト:http://eurolive.jp/shibuya-rakugo/

らくごカフェ(神保町)
出典:朝日新聞DIGITAL https://www.asahi.com/showbiz/stage/rakugo/TKY200902070076.html

神田古書センター5階で少人数公演が頻繁に開催。1杯飲みながら楽しめます。

興行・料金:平日 夜間、土日祝 昼夜で随時開催/料金は回毎に変動
公式サイト:https://rakugocafe.exblog.jp/

中入り…前半と後半の区切りのこと。
前座・二ツ目を中心とした前半から真打・トリへ続く後半に切り替わる
寄席名物の助六寿司を買いに行ったりするのが定番の過ごし方

寄席を楽しむコツ
お弁当と飲み物を買う…多くの寄席は飲食OK!
新宿なら伊勢丹のデパ地下、浅草なら仲見世通りで何かを買ってから入ると粋
夜割を利用…18時や19時以降に入ると、1,000円〜1,500円ほど安くなることも

江戸の長屋 vs 現代の成功モデル

江戸時代は、鎖国という限られたリソースの中での維持が重視された社会でした。

身分制度により人生のゴールがある程度決まっていたからこそ、人々は無理な競争を避け「今日食べていければいい」「長屋の連中と笑い合えれば最高」という、肩の力の抜けた豊かさを肯定していました。

それに対し、現代は際限のない上昇を求められるモデルです。

江戸現代
目標今日の酒、仲間との笑い資産形成、キャリアアップ
コスト将来の不安、低い生活水準ストレス、時間、競争、責任
得られるもの精神的な自由、心の余裕物質的な豊かさ、選択肢の多さ
リスク困窮、病気への弱さ燃え尽き症候群、比較地獄

落語の主人公たちは、明日食えなくなるリスクを受け入れる代わりに、「今この瞬間のストレス」から解放されているのです。

さて、現代は高度経済成長を経た成熟社会。人口減少や低成長で、頑張れば給料が上がるという共通のゴールは消えつつあります。

そんな中、出世や高級車といった分かりやすい幸せより、気の合う仲間と飲む酒のような江戸的な横の豊かさ、自分の機嫌を自分で取るスキルが再評価される時代となったのではないのでしょうか。

とはいっても、車は欲しくないけれど、海外旅行には行きたい。つくづく人間とはどうしようもないものです。

そこで、癒しのサプリメントとしてだけではなく、装備となるエナジードリンクとして落語を転用してみます。

現代流・落語的サバイバル術

「欲」を否定せず、エネルギーに!

  • 落語の強欲な男たちはどこかチャーミング。欲を自分の人生という一席を面白くするエンジンと捉える
  • 欲を隠さず、失敗しても笑い話にできる余裕を持つ。笑いながら稼ぐポジティブな巡りを生み出す

愛嬌で味方を増やし、チャンスを呼び込む!

  • 外面は与太郎のように肩の力が抜けた、敵を作らない可愛がられ力を身につける
  • 緻密な戦略は裏で進め、表では運が良くて、と笑い飛ばし、欲を笑いに

失敗してもネタになる!何度でも打席に!

  • 『芝浜』の勝五郎のように欲に溺れる時期と欲を断つ時期を使い分ける
  • 失敗しても落語のようにネタになる、といった精神的セーフティネットを持ち、何度でも打席に立つ

談志は、「人生、成り行き」という言葉も残してます。頑張る日もあれば、力を抜く日もある。それを含めて、大義的に全ては成り行きなのでしょう。

どんなに資産を築いても、心がギスギスして「今」を楽しめなければ本末転倒です。

落語の登場人物のように、うまくいかなければ「まあそんなもんだ」、悔しければ「てやんでえ」今日を真摯に生きる

心の江戸魂を燃やして、人生の一席を最高に景気が良く、笑いに満ちたものに

やはり落語はサプリにもエナジードリンクにもなり得る、現代人の最強の相棒になってくれそうです。