酒飲みガチ女&90年代漫画ラバー必見!有間しのぶ著『酔っちゃった』

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読むだけでノスタルジーに浸れる!

どうも、なかなかの酒好きのサニー柴本です!

昨今は『孤独のグルメ』から『ワカコ酒』など、グルメ漫画のみならずお酒漫画も続々と発刊されていて、そのキャラクターや設定を楽しむとともにお酒の知識も得られるというメリットがありますが、こちらは1989年から講談社のモーニング増刊で連載されていた有間しのぶ著の『酔っちゃった』

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花屋でバイトする酒好きな20歳、みちるが主人公で、お酒をきっかけに知り合った40歳の舞台監督のゴローとの年の差男女のお話。

著者は『その女、シルバ』で手塚治虫文化賞を受賞するという経歴の持ち主。

この漫画は30年も前の作品なので、前述の「お酒の知識、お酒メイン」という時流のコンセプトではなく「お酒にまつわる情事」を描いています。

この90年代の絵柄、作風が私の世代にクリーンヒット。著者のコメントで「夜の感じを出したくて当時アナログではほとんどなかった薄墨の使用を許してもらった」というものを拝見しましたが、その作画によってお酒を飲んでいると感じる夜の街の高揚感やドラマ感が非常によく伝わり、世界観に酔いしれることができます。

連載当時はバブル絶頂期、好調な経済下での自由な夜の街、怖いものなしの20歳の主人公。

この年代の少女漫画にありがちな作者の憧れが入った背伸び感もありますが、画力・描写力により痛々しさを感じさせず作品の世界観に入ることができ読むだけで街歩きせずとも酒場の雰囲気を感じとることができるのです。(それも銀座辺りの)なんとコスパのいい!

物語のあらすじ

主人公のみちるは、バイト先の花屋で一杯やってしまうようなきっぷのいい酒好き。(ここら辺の設定も時代や作者の思い切りを感じ、読んでいて楽しい)

ある日、飲んでいた酒場でゴローと出会い「なんかこのオジサンとこのまま別れたくない」と感じ、送ってもらったあとに自宅を前にしてゴローをお茶に誘います。

そうして気の合う2人は関係を深めていくのですが、年の差を気にするゴローがこれ以上深い関係になるのを避け、「俺はいつでもこのままごとが終わってもいいんだ」と言い放ちみちるとケンカをします。

結局ゴローはみちるの真っ直ぐな気持ちと感情表現に感化され、考えを改めてめでたく和解。適当な関係だけではなく、恋人として歩みを進めていく過程が描かれています。

やっと平穏な日々を掴んだと思ったら、今度はゴローが仕事先で有名女優に言い寄られ、アプローチをかけられてる様をみちるは気にかけます。そんな折、みちるはその女優に「あなたとは世界が違う」と酒の席でふっかけられます。

そこで、みちるは内なる気の強さを発揮し…。

世界が違うウ? だからなによ それでも女はあたしだわよ!と、3回にわたるビンタのあと、口から血を流す女優に啖呵を切ります。

本当にみちるのような女性は、男を自分の第六感で見付けるし捕まえるし、恋敵が「有名女優」だとしても相手を同じ土俵の「女」として見るので、ひるむことがありません。

まさに一字一句「それでも女はあたしだわよ」です。

気の強い女っていいなあ!恋人が芸能関係、恋敵が有名女優だろうと、恋人なのは自分、自分が好きな男に挑んで選ばれた女、というある意味、少年漫画の主人公のような真っ直ぐで不屈な精神性。

こんな女にこれだけ真っ直ぐこられたら、男冥利に尽きるだろうなとも思ってしまいました。

しかし、3回ビンタはさすがに面白くもある。また、気の強い美形の汚い言葉の罵りあいは、見る価値があるものです。

私は強気の女性の口からよく聞く「男女の区別なく、男性を人間として見てる」という発言がいけ好かなかったんですが(だから彼氏ができない)、この作品を読んで、人と人は年齢などの枠組みを超えて人間性で惹かれ合うんだなあと、バイアスを取り払い直感に従うことについて、ちょっとしみじみと考えてしまいました。

みちる、いい女!

主人公みちるの酒美学

そもそも酒との向き合い方も、背伸びしてるとはいえ、一歩間違えればアル中予備軍な飲み方をしている気がするみちるですが、曰く「お酒を飲むのは好きなの 何か面白い事が起こりそうな ちがう気分になれるじゃない」。

なんとも可愛らしい意見のように聞こえ、明るいお酒との付き合い方をしていて人生を楽しんでる様子が好感を持てます。まあ、みんな初めはこういう気持ちで飲酒を始めるんですけどね…。

また、「呑み屋に女一人て言うのも常識外とは知ってるけど別に男と仲よくした気もないの 当然みたいに話しかけないでくれる?」という酒飲みガチ女子の代弁も。

これが、わかる…しょうがないけど、わかる!でも、いい男なら大歓迎です!

そんな起承転結な本作ですが、各タイトル名はお酒の名称。

お酒のうんちくが巻末にささやかにコメントされていますが、作者の簡素なコメントが可愛い。

昨今のお酒漫画とは離れ、ノスタルジーを感じながら「お酒の雰囲気」と「酒場の情事」を感じながら作品を楽しむことができます

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